物流の「三現主義」はもう古い?「五ゲン主義」への取り組み
昨今物流に求められているのは改善です。しかし、何から手を付けてよいのか分からないというのが経営者の方の悩みではないでしょうか。それもそのはず、物流の多くは「作業」であり、経営者とは少し距離のある部門であることは事実です。しかし近年、物流を経営戦略として捉える「三現主義」に基づくロジスティクスが注目されています。本日は、物流改善の基本精神でもある「三現主義」について解説します。現場・現物・現実を見据えた取り組みが鍵です。
目次
三現主義とは
三現主義とは現場・現物・現実の3つの「現」を重視する考え方です。その名の通り、現場に行って現物を見て現実を知ることを重要視しています。特に製造業の場合は課題を抽出するためには現場にヒントがある場合が多く、いくら情報化社会だからと言って現場に行かずに机上の空論だけで物事を判断してしまっては後々痛いしっべ返しをくらう場合が多いです。実際にトヨタ自動車や本田技研工業も三現主義を掲げており、経営幹部と一般社員が一緒になって課題解決に取り組んでいると言われています。
会社では一般社員が「上は現場のことを何も分かっていない」と不満を口にするケースがよく見受けられますが、それも経営幹部が現場に一切関与せずに物事を決めてしまっているからです。つまり三現主義は単なる課題解決のための基本指針というだけでなく、会社全体のコミュニケーション向上を図る取り組みでもあります。そのため、企業の中には三現主義を行動指針として掲げている企業もあります。
物流の三現主義
三現主義が全ての業界に当てはまるかどうかは一概には言えませんが、物流業界においては特に三現主義が重要視されるべきです。なぜなら、物流は常に「モノ」を取り扱う業務であり、そのモノの動きや取り扱いが、現場で直接的に行われるからです。物流には輸送、保管、荷役、包装、流通加工、情報の6つの主要な機能がありますが、これらはすべて現場で遂行されるため、現場を観察し、現物を確認し、現実の課題を理解することが重要です。
例えば、物流システムの管理部門では、作業員のように日常的にモノに触れる機会は少ないかもしれませんが、三現主義を実践することで、現場に足を運び、実際の作業状況を確認し、作業員にヒアリングすることができます。これにより、問題点を抽出し、具体的な要件定義が可能になります。このように、物流業界では三現主義の実践が現実的な改善策を生むため、企業全体で取り組むべき基本方針となっています。
具体的な三現主義の取り組み
弊社トミーズコーポレーションでも、現場・現物・現実に基づく三現主義を重視しています。各営業倉庫で定期的に実施している「拠点巡回」では、経営幹部が現場責任者と共に倉庫を巡り、実際の状況を確認しながら課題を抽出・指導しています。この際、三現主義に基づき、物流の基本精神である5S(整理・整頓・清掃・清潔・躾)も重視され、日々の倉庫運営において安全と効率性を向上させるための基盤となっています。課題はチェックシートで管理され、現場責任者が期限内に改善し報告することが求められています。
前項でも少し触れましたが、この拠点巡回は三現主義に基づき、さまざまな役割を果たしています。例えば、現場責任者の体調やメンタル面の確認も重要なポイントです。現実の業務に直面している人たちの声を直接聞くことが、現場の問題を早期に察知し、迅速に対処するための第一歩です。ITやロボットが普及しても、それを管理するのは人であり、人とのコミュニケーションが重要です。三現主義を通じて、経営幹部が従業員の声を汲み取り、大きな問題を未然に防ぐことができます。
三即主義
その他、現場で「備品が見つからない」や「WMSエラー」などの問題が発生した場合、すぐに対応するのも三現主義の一環です。ここでは三即主義(即時・即座・即応)も重要視されており、問題が発生した際にはすぐに現場に駆けつけて対応します。「あとで」や「そのうち」という言い訳を徹底的に排除し、迅速な対応を行います。
三徹主義
あと「三徹主義」も重要視しています。三徹主義とは徹頭・徹尾・徹底の3つの「徹」を重視する考え方です。本当に重要なミスなどは再発防止のためにも、頭の先(最初)から尾っぽ(最後)まで徹底的にやりつくすことを心がけています。
これらは「3現3即3徹」として生産現場のみならず、物流現場でも重要視されています。
注目される「五ゲン主義」
最近では、現場を重視する三現主義に加えて、原理・原則を重要視する「五ゲン主義」が物流業界でも注目されています。「原理」とは物事の成り立ちを理解するための基本的なメカニズムであり、「原則」とはその性質に応じて定めた規則のことです。物流現場では、三現主義を基盤としながら、原理と原則を組み合わせた改善策が求められています。以下は、五ゲン主義に基づいた具体的な改善事例の一例です。
例えば、物流倉庫のピッキングエリアの導線に段ボールが放置されていたらどのような問題が起きるのでしょうか。導線が悪くなることで生産効率は落ちてしまいますし、場合によっては足に引っかかり転んでケガをしてしまうかもしれません。つまり導線に不要な物が置かれている状態はありとあらゆる悪影響を及ぼす要因となります。これは原理として捉えることができます。ではそれらを未然に防ぐためにどのような原則(ルール)を設定すれば良いでしょうか。答えは「導線を明確化するためにラインテープを貼る」、「導線内には何も置いてはいけないルールを徹底する」です。
物流倉庫の改善はNHKが効果的
物流業界にはNHKという言葉があります。これはN(無くす)、H(減らす)、K(変える)という意味合いです。具体的には以前の記事「梱包作業のムダ削減はNHKを優先的に取り組むこと」を参考にしていただきたいのですが、原理としてムダが発生する要因があるのであれば、その原理が発生しないようにする取り組みです。実はこれが一番手っ取り早い方法です。というのも原理に対して原則を用いて処理することも重要ですが、残念ながらルールは完全に守られないものでもありますので、元となる根本的要因をできるだけ排除してしまうという考え方です。
経営幹部が物流現場に入る上で重要視したいこと
ですが、同時に課題もあります。それは、普段現場で作業をしていない経営幹部が、実際の現場を正確に理解し、適切な経営判断ができるかという点です。ここで大切になるのが三現主義です。現場に足を運び、現物を確認し、現実を把握することで、経営判断をより正確なものにします。物流改善には、三現主義に基づく専門知識と経験が欠かせません。例えば、生産効率を上げるために数千万円のマテハン機器の導入を検討する際も、三現主義の視点から実際にその投資が効果的かどうかを慎重に見極める必要があります。経営幹部が現場としっかり向き合い、現実を踏まえた意思決定を行うことが、真の改善につながるのです。
まとめ
いかがでしたでしょうか?三現主義並びに五ゲン主義の重要性について御理解いただけたかと思います。しかしながら、同時に物流現場を改善するためには専門知識と経験も必要であるのは紛れもない事実です。
弊社トミーズコーポレーションはBtoBやBtoCといった業態問わず、複数の物流センターを運営する物流実績25年の物流会社です。これまで物流の課題を抱えている多くの企業様をサポートしてまいりました。物流コンサルティングサービスでは経営幹部、そして現場責任者と一緒になって物流改善を推進してまいります。また、場合によっては物流のアウトソーシングを検討されても良いかもしれません。課題が蓄積されている物流部門を外部に委託することで、自社の物流課題が無くなります。もし、自社の物流部門に課題を抱えている場合は一度お気軽にお問合せいただければと思います。
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