ロジスティクスとは?物流との違いを図解でわかりやすく解説
近年、世界はデジタル化とグローバリゼーションという大きな波に包まれています。私たちの生活やビジネスも大きく変化し、その変化の中心で重要な役割を担っているのが「ロジスティクス」です。
しかし、ロジスティクスとよく似た言葉である「物流」や「サプライチェーンマネジメント(SCM)」の違いを正確に理解している人は意外と少ないのが現状です。
そこで今回は、これらの用語の意味とそれぞれの特徴を、図解を交えながらわかりやすく解説します。
目次
ロジスティクスとは
ロジスティクスは、単に商品を適切な場所に適切な時期に届けるという物流の基本機能を超え、経営全体を通じて最適な物資流を実現するための戦略的な取り組みです。これには、原材料の調達から製品の生産、最終消費者への販売、さらには使用後の回収・リサイクルに至るまでの一連のプロセスが含まれます。ロジスティクスの目的は、これらのプロセスを統合し、効率化することで、最終的には顧客満足度の向上を実現することにあります。
さらに近年、ロジスティクスは環境保全や安全対策といった社会的課題への対応にも焦点を当てています。例えば、CO2排出量の削減、資源の有効活用、災害時の物資供給の確保など、持続可能な社会の実現に向けた役割を果たしています。このように、ロジスティクスは経済活動の効率化だけでなく、地球規模の課題解決に貢献する重要な機能を持つようになってきました。
このような広範な役割を担うロジスティクスは、ビジネスだけでなく私たちの生活にも密接に関わっています。効率的かつ持続可能なロジスティクスの実現は、企業の競争力強化はもちろんのこと、より良い社会の構築に向けた重要な鍵となるのです。
ロジスティクスの語源
雑談ですが、元々、ロジスティクスはもともと軍事用語として使われていました。戦場では、銃器や弾薬、食糧、衣服、薬など、生き残るために必要不可欠な物資を、安全な後方から危険を顧みず前線部隊へと届ける後方支援活動が極めて重要でした。この活動が滞ると、戦闘の効率は著しく低下し、兵士の命すら危険に晒されることになります。そういった背景から、ロジスティクスは非常に重要な概念として扱われるようになりました。
この軍事由来のロジスティクスは、現代でもビジネスや日常生活の中で「必要な物を、必要な時に、必要な場所へ」という基本原則をもって活用されています。もちろん、現代のロジスティクスは、戦場での生死に関わる直接的な支援というよりは、経済活動や社会生活の質の向上に貢献する形で進化しています。しかし、その根底にある思想は古代の軍隊が持っていたものと変わらず、今日のロジスティクスの効率性や信頼性、タイムリーさを支える基礎となっているのです。これはロジスティクスの語源を振り返ることで、より深く理解することができます。
物流とは
物流とは、英語ではフィジカルディストリビューション(Physical Distribution)と言います。物資を供給者から需要者に移動する過程の活動のことを指しますが、一般的には輸送・保管・荷役・包装・流通加工、またはそれらに関連する情報の諸機能を総合的に管理する活動として知られています。
物流の領域は非常に広く、その役割も多岐にわたります。具体的には、「調達物流」は原材料や部品の供給元から生産拠点への移送を、「生産物流」は製造プロセス内での材料や製品の流れを、「販売物流」は完成品を消費者や販売点まで届けることを、「回収物流(静脈物流)」は使用後の製品や材料の回収・リサイクルを、「消費者物流」は最終消費者の手元に製品を届けるプロセスを指します。
また、これらの物理的な活動に加えて、物流には情報流の管理も重要な要素となります。物資の現在地、状態、移動予定などの情報を正確に管理することで、供給チェーン全体の効率性と透明性が向上します。近年では、デジタル技術の進化により、リアルタイムでの情報共有や分析が可能になり、物流管理の質の向上に大きく貢献しています。
このように、物流は製品やサービスが生産される場所から、それが必要とされる場所へ効率的に移動するための重要なプロセスです。その役割は経済活動だけでなく、私たちの生活の質にも直結していると言えるでしょう。
ロジスティクスと物流の違い
物流は「活動」であり、ロジスティクスは「経営管理」であると言えます。そのため、物流はロジスティクスの一部として考えられるでしょう。つまり、物流が具体的な実行部分であるのに対し、ロジスティクスはその背後にある計画、実施、監視の全体的なフレームワークを提供する役割を持っています。
ロジスティクスは、物流活動をただ実行するだけでなく、それらをどのように、いつ、どの程度の規模で行うかといった意思決定を行います。これには、コスト削減、効率向上、顧客満足度の向上といった目標達成に向けた戦略的なアプローチが含まれます。また、サプライチェーン全体を通じた情報の流れの管理も、ロジスティクスの重要な側面の一つです。
このように、物流とロジスティクスは密接に関連しているものの、その役割と範囲には明確な違いがあります。
ロジスティクスとサプライチェーンマネジメント(SCM)の違い
ロジスティクスに似た言葉にサプライチェーンマネジメント(SCM)があります。この2つの言葉は、しばしば混同されがちな概念ですが、それぞれが持つ役割と範囲には大きな違いがあります。ロジスティクスは主に、単一の企業内、あるいは企業間での物資の流れと情報の管理に焦点を当てています。これに対し、サプライチェーンマネジメントはより包括的なアプローチを取り、製品の原材料の調達から最終消費者への配送に至るまで、全体を通じた流れを最適化しようとするものです。つまり、ロジスティクスを含むより広範な活動をカバーしており、原材料の供給者から最終的な消費者に至るまでの全てでの連携を促進します。
この関係性を簡単に言うと、ロジスティクスはサプライチェーンの一部分に特化しており、商品やサービスが効率的に流通するための具体的な方法と手段を提供します。一方で、サプライチェーンマネジメントはサプライチェーン全体の戦略的な計画と実行に関わり、全体のパフォーマンスを最大化するために、様々な業務間の調整や統合を行います。
これらの違いを踏まえると、ロジスティクスは「どのように」商品や情報が移動するかに注目し、サプライチェーンマネジメントは「なぜ」その流れが存在し、「どのように」全体を最適化するかに焦点を置きます。サプライチェーンマネジメントはロジスティクスを含む多くの要素を統合し、コスト削減、効率化、顧客満足度向上といった目標達成に向けた全体的なビジョンを提供するのです。
ロジスティクスの目的
一般的に、これまで多くの企業で物流は、「欠かせない活動ではあるが、重視もされない活動」として位置付けられてきました。それは、もしかすると単に商品を保管して届けるためだけの活動として誤解されていたのかもしれません。
実際には、ロジスティクスは企業が直面するさまざまな課題に対応し、顧客満足度を高めるための重要な手段として機能します。近年の物流コストの上昇は、多くの企業にとって物流プロセスの見直しと効率化を促す一因となりました。これにより、単にコストを削減するだけでなく、納期の短縮、在庫の最適化、サプライチェーンの透明性向上など、顧客サービスの質を根本から改善することが可能になります。
ロジスティクスは、地球にやさしい取り組みを進める中で、企業が大きな役割を果たすことができます。エコに配慮した運送や物流の流れを作ることで、無駄なゴミを減らしたり、エネルギーを上手に使ったりする助けになります。これは、企業が社会に貢献する活動(CSR)の一つとして、高く評価されることもあります。
このように、ロジスティクスの目的は単に物流の効率化に留まらず、企業の競争力強化、顧客満足度の向上、そして環境への配慮という、より広範な視点から組織全体の成長と発展に貢献することです。これらの目標を達成するためには、常に物流の方法を見直し、新しい技術やアイデアを積極的に取り入れ、最適な物流戦略を実行に移していく必要があります。
ロジスティクスの経営効果
今まで物流がうまく機能しなかった企業もこのロジスティクスを社内に取り入れることで、利益を増やすことが可能です。ロジスティクスで期待できるのは以下の4つになります。
在庫の適正化
在庫の適正化は、ロジスティクスの経営効果を体現する重要な一例です。適切な在庫管理を実現することで、必要な商品が常に適切な量だけ保持され、過剰な在庫による資金の固定や、在庫不足による顧客サービスの低下を防ぎます。このようにバランスの良い在庫を保つことで、企業は市場の変化に柔軟に対応でき、チャンスを最大限に活用することが可能になります。結果として、在庫が足りないことによる機会損失の防止はもちろん、余分な在庫で関わるコストを減らし、売上の向上に直結します。
さらに、在庫の適正化は、不良在庫のリスクを大幅に低減させることができます。不良在庫とは、需要のない商品や時代遅れの商品など、販売が難しい在庫のことを指し、これを抱え続けることは企業にとって大きな負担となります。適切な在庫管理を通じて、これらの在庫を最小限に抑えることで、ムダなコストを削減し、資源をより有効に活用することができるのです。
ムダな生産の回避
在庫の適正化ができていれば、市場の需要と供給のバランスを正確に理解することができるので、それに基づいて生産計画を立てることができます。これにより、過剰な生産を避けることが可能となり、生産に伴う無駄な資源の使用やコストの発生を最小限に抑えることができます。
余剰な生産がなくなることで、生産過程で発生する余分な材料コスト、労働コスト、そして保管コストを削減できます。また、不必要な生産を行わないことは、製造過程でのエネルギー消費やCO2排出量の削減にもつながり、企業の環境への影響を減らすことにも貢献します。このように、ムダな生産の回避は、経済的な側面だけでなく、環境的にも大きな価値を持ちます。
物流コストの削減
物流コストの削減は、ロジスティクスの経営効果において中心的な役割を果たします。在庫の適正化とムダな生産を避けることで、企業は物流に関わるさまざまなコストの削減を実現することができます。具体的には、余剰在庫によって生じる材料費や生産コストの増加を防ぎ、またそれらの在庫を輸送し保管する際に発生するコストも低減させることが可能です。
さらに、輸送手段の選定やルートの最適化、配送スケジュールの精密な調整によってもコストが削減できます。これにより、輸送にかかる時間や費用を効果的に削減し、全体的な物流の効率を高めることができます。
営業支援
営業支援としてのロジスティクスの経営効果は、その戦略的な価値において非常に重要な位置を占めます。ロジスティクスがしっかりと組織内に統合されている企業では、営業部門がその本来の業務、つまり顧客との関係構築や販売活動に集中できるようになります。在庫管理などの物流関連業務はロジスティクス部門が担当することで、営業部門は顧客のニーズに応えるための戦略立案やマーケティング活動に専念することができます。
さらに、ロジスティクス部門が物流を専門的に管理することで、企業のサービスの品質向上にも寄与します。納期の正確性や迅速な対応は顧客満足度を高める上で欠かせない要素であり、これらはすべて効率的なロジスティクスシステムによって支えられています。また、物流プロセスの透明性を高めることで、顧客への情報提供がスムーズになり、企業と顧客との信頼関係を深めることにも繋がります。
第4次技術革新「ロジスティクス4.0」とは
近年、新たな物流の概念として「ロジスティクス4.0(Logistics 4.0)」がドイツで生まれました。この概念は、物流と情報技術の融合を通じて、従来の物流プロセスを根本から変えるものです。ロジスティクス4.0は、これまでの物流の歴史における新たな節点として、以下のような技術革新の流れを受け継いでいます。
第1次:トラックや鉄道による輸送の機械化
第2次:コンテナ輸送やフォークリフトによる物流の効率化
第3次:コンピュータを用いた物流管理システムの普及
そして、「ロジスティクス4.0」は、最新の技術を用いて物流をもっと進化させる取り組みです。これには、IoT(モノのインターネット)、AI(人工知能)、物流ロボット、自動運転技術などが使われ、物流プロセスをデジタルで管理しやすくし、もっと自動的に行えるようにします。これらの先端技術の活用により、リアルタイムでのデータ収集と分析が可能になり、物流の可視化と効率化が大きく進むことになります。また、従来は人手を必要とした作業の自動化により、人材不足問題にも対応できるようになります。
ロジスティクス4.0の導入によって、企業はもっと正確に需要を予測できるようになり、サプライチェーン全体の最適化を図ることができるようになります。また、顧客のニーズに素早く対応するためのフレキシブルな物流体制が可能となり、最終的には顧客満足度の向上とコスト削減を同時に実現することができます。
こうしたロジスティクス4.0による変革は、単に物流業界だけでなく、製造業、小売業、サービス業など、多くの業界におけるビジネスモデルそのものを変える可能性を秘めています。これからの時代、企業が競争力を維持し、成長を続けるためには、ロジスティクス4.0を理解し、この新しい流れに乗ることがとても重要です。
まとめ
この記事では「ロジスティクス」、「物流」、「サプライチェーンマネジメント」の違いについて解説しました。
弊社トミーズコーポレーションでは物流の効率化を目指す企業様向けに物流コンサルティングを提供しております。WMS(倉庫管理システム)の導入サポートはもちろん、効率化を図るための物流改善を経営者様と一緒にお取組みさせていただきます。導入事例でご紹介しておりますので、ご確認いただければ幸いです。
また、物流のアウトソーシングを検討されている場合もトミーズコーポレーションにお任せください。BtoB、BtoC、EC等業態問わず対応可能で、在庫を一元管理することにより機会損失を未然に防ぎ、物流コストを削減することが可能です。お気軽にお問合せください。
物流を戦略的に考えるならトミーズのコンサルティングサービスがオススメ
物流アウトソーシングならトミーズコーポレーション