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TOPコラム在庫管理における棚カード(棚札)の課題とWMSへの移行のすすめ

公開日: 2025/01/15

在庫管理における棚カード(棚札)の課題とWMSへの移行のすすめ

はじめに

在庫管理は、企業の経営効率を左右する重要な業務のひとつです。適切な在庫管理を行うことで、必要な時に必要な商品を確保し、欠品や過剰在庫といった問題を防ぐことができます。さらに、在庫の流れをスムーズにすることで、業務の効率化や顧客満足度の向上にもつながります。しかし、在庫管理は単に「数を数える」だけではなく、商品の動きや需要に応じた適正なコントロールが求められます。そのため、管理手法やツールの選択が重要となります。

従来、多くの企業では「棚カード(棚札)」を用いた在庫管理が一般的でした。棚カードは、商品ごとの在庫情報を手書きで記録するシンプルな管理手法であり、導入コストが低く、比較的小規模な現場では手軽に運用できる点がメリットとされてきました。この方法は、特にデジタルツールが普及していなかった時代には非常に有効でした。しかし、近年の物流環境は大きく変化しています。取り扱う商品数の増加やリードタイム短縮への要求、正確で迅速な在庫情報の把握など、企業が求める在庫管理の精度と効率は、年々高まっています。こうした状況の中で、棚カードによる管理は、効率面や精度面で限界を迎えるケースが増えてきました。

このような課題を解決する手段として、近年では、WMS(倉庫管理システム)の活用がますます重要視されています。WMSは在庫の入出庫情報をリアルタイムで管理できるため、情報の正確性が高まり、作業効率も飛躍的に向上します。また、入出庫データを分析することで、需要予測や在庫最適化といった高度な管理も可能になります。こうしたシステムの進化により、企業は競争力を強化しながら、より効率的な物流運営を実現できます。

本コラムでは、まず棚カード(棚札)を用いた在庫管理の役割とメリットについて詳しく解説します。そのうえで、現代の物流環境において棚カード運用が抱える課題を明らかにし、それを解決する手段としてWMSの導入についてご紹介します。さらに、WMSを導入することでどのように業務効率が向上し、企業の競争力が高まるのかを解説していきます。

棚カード(棚札)による在庫管理とは

棚カードの基本的な役割と目的

棚カードとは、商品の在庫情報を管理するために使用される紙ベースの管理手法です。倉庫や店舗の棚に取り付けられ、品番や商品名、現在の在庫数、入出庫履歴などの情報を記録します。主に手作業による管理に適しており、アナログながら視覚的に分かりやすい管理方法として長年利用されてきました。

棚カードの役割は、在庫状況を即座に把握できるようにすることです。作業員は棚カードを確認することで、商品ごとの保管場所や在庫数を迅速に把握し、入出庫や発注作業を行うことができます。また、棚卸作業の際にも、実際の数量と記録された数量を突き合わせることで、在庫の精度を検証する役割を担っています。

さらに、棚カードには「発注点」や「安全在庫数」を記載することもあり、発注タイミングを逃さないように管理するための補助ツールとしても機能します。このため、小規模な倉庫や少品種の商品を取り扱う現場では、棚カードが非常に重宝されてきました。

棚カード(棚札)のメリット

棚カードは、シンプルな構造により、現在でも一定のニーズを持つ手軽な運用方法です。以下に棚カードの主なメリットを挙げます。

低コストで導入できる

棚カードは紙とペンがあれば始められるため、システム導入などに比べて初期費用がほとんどかかりません。小規模な倉庫や限定された商品管理には十分な機能を果たします

運用がシンプルで扱いやすい

特別なトレーニングが不要で、誰でも簡単に使用できる点が魅力です。新しく入った作業員でもすぐに業務に取り組めるため、教育コストを抑えることができます。

視覚的に在庫情報を把握できる

棚カードは商品ごとに設置されるため、現場で直接確認できるという利便性があります。特にデジタルシステムが苦手な作業員にとっては、紙ベースの情報管理は安心感があります。

小規模・低頻度の管理に適している

取扱量が少なく、出庫や入庫頻度が低い場合は、棚カードで十分に管理できることが多いです。このため、定期的な棚卸や補充が必要な商品に適した管理方法と言えます。

棚カード(棚札)のデメリットと課題

一方で、棚カードはアナログ管理の限界を抱えており、規模が大きくなるほど課題が顕著に現れます。以下にその主なデメリットと課題を整理します。

ヒューマンエラーのリスクが高い

棚カードは手書きで記入・更新を行うため、数字の記入ミスや計算間違いが発生しやすくなります。また、記録を忘れることによる情報のズレも課題です。こうしたヒューマンエラーは、在庫過不足や発注ミスにつながる恐れがあります。

リアルタイム性がない

入出庫ごとに記録を更新しなければならず、作業の遅れや記録漏れが発生すると、在庫情報が最新の状態ではなくなります。このため、急な受注対応や棚卸作業に支障をきたす可能性があります。

管理の煩雑さと作業負担

商品数や在庫拠点が増えると、棚カードの管理自体が膨大な作業量になります。大量の商品を扱う倉庫では、棚カードの運用だけで在庫精度を維持するのは困難です。また、棚カードが物理的に紛失するリスクも伴います。

データ分析や需要予測が困難

棚カードでは過去のデータを集計・分析するのが難しく、需要予測や発注点の最適化など、戦略的な在庫管理には対応しにくいという欠点があります。管理精度を高めるには、システム化によるデータ処理が必要になります。

拡張性が低い

棚カードは小規模な管理には向いていますが、業務拡大や取扱量増加に対応しづらいです。ビジネスの成長とともに、棚カードからシステム管理への移行を迫られるケースが多くなっています。

このように、棚カードはシンプルでコストを抑えた管理ができる反面、情報の正確性や作業効率の面で限界を抱える管理方法です。特に近年では、多品種・小ロット化が進み、物流業界に求められる精度とスピードが高まっているため、棚カードのみで対応するには課題が多くなっています。

現代の在庫管理に求められる要素

近年、物流業界を取り巻く環境は大きく変化しており、在庫管理に求められる要素もますます高まっています。かつては棚カードを使った手動管理が主流でしたが、現在では多品種・小ロット化や消費者ニーズの多様化に対応するため、迅速で正確な在庫管理が求められています。ここでは、現代の在庫管理に求められる主な要素について解説します。

即時性と正確性の確保

現代の在庫管理では、リアルタイムでの在庫情報更新と正確性の確保が最重要課題とされています。特に、Eコマースや多頻度出荷を行う企業では、顧客からの注文に即座に対応できる体制を整える必要があります。リアルタイムでの在庫反映ができなければ、欠品や誤出荷といった問題が発生し、顧客満足度を著しく低下させるリスクがあります。また、適正在庫の維持には正確なデータが不可欠であり、手作業で行う管理方法では更新漏れや記入ミスによる情報のズレが生じやすくなります。このため、即時性と正確性を担保するシステムの導入が求められています。

多品種・小ロットへの対応力

近年、消費者ニーズの多様化やカスタマイズ需要の増加により、少量多品種の取り扱いが当たり前となっています。これにより、在庫管理の複雑さは増大し、商品ごとの詳細な管理が求められるようになっています。例えば、1つのロケーションに複数の商品が保管される場合や、同じ商品でも異なるロットや規格が混在する場合には、正確な管理が欠かせません。また、頻繁な入出庫や在庫移動にも素早く対応できる仕組みが必要です。従来の棚カードではこうした多様なニーズに対応するのは難しく、管理精度と柔軟性を高めるためにシステム化の重要性が増しています。

作業効率の向上

物流業界では慢性的な人手不足が課題となっており、作業効率の向上は急務となっています。特に、ピッキングや補充作業は時間と労力を要するため、効率化のためのシステム導入が求められています。バーコードによるスキャンシステムを導入することで、商品識別や数量確認が瞬時に行えるようになり、手入力によるミスを削減できます。また、ピッキングリストの自動生成や作業指示のデジタル化により、現場作業員の負担軽減と作業時間短縮が可能です。これにより、少人数でも高精度な作業を実現でき、コスト削減と生産性向上の両立が図れます。

トレーサビリティと品質管理の強化

消費者の安全・安心への関心が高まる中で、在庫管理にはトレーサビリティ(商品の生産から流通、販売に至るまでの過程を追跡・管理できる仕組み)の確保と品質管理の強化が求められています。食品や医薬品などの分野では、ロット番号や賞味期限の管理が不可欠であり、問題発生時には迅速な追跡と対応が必要です。また、品質クレームへの対応能力が企業の信頼性向上に直結するため、出荷履歴や入庫履歴を記録し、必要に応じて即時に検索できる機能も求められます。棚カードではこうした管理は非常に手間がかかるため、システムを活用したデジタル管理に移行することで、業務負担を軽減することができます。

データ分析と需要予測の活用

データ活用の重要性が高まる現代において、過去の販売データや在庫情報を分析し、需要予測を行う機能が求められています。適切な分析により、需要の傾向を把握し、在庫量や発注タイミングを最適化することで、過剰在庫や欠品を防ぐことができます。

拡張性とシステム連携の重要性

事業規模の拡大や取扱商品の増加に柔軟に対応できる拡張性も、現代の在庫管理には欠かせません。たとえば、新たな倉庫拠点を増設する場合や、取り扱う商品が大幅に増えるケースでは、手作業による管理では限界が生じます。WMS(倉庫管理システム)のようなシステムを活用することで、ERP(基幹業務システム)や販売管理システムと連携しながら、一元管理を実現することができます。また、バーコードを活用した管理体制を整えることで、情報の正確性と作業効率を高めることができます。将来的な事業拡張を見据えた柔軟な管理体制を整えるためには、拡張性とシステム連携を視野に入れた在庫管理の見直しが求められます。

現代の在庫管理には即時性、正確性、効率性、データ分析力、品質管理、拡張性といった多面的な要素が求められています。特に、物流業界の競争が激化する中で、これらの要素をすべて満たす管理体制を整えることは、企業の成長に直結します。

WMS(倉庫管理システム)の導入による解決策

WMSとは何か

WMS(倉庫管理システム)とは、倉庫内の在庫管理を効率化し、正確で迅速な業務運営を実現するためのシステムです。商品の入出庫管理、在庫のリアルタイム更新、ピッキング指示の最適化など、倉庫内のあらゆる業務をデジタルで管理できるため、従来の棚カードや手作業による在庫管理と比較して圧倒的な精度と効率を実現します。

リアルタイム在庫管理による正確性向上

WMSを導入する最大のメリットのひとつは、リアルタイムでの在庫更新が可能になることです。入庫や出庫、移動などの操作をシステム上で即時反映することで、最新の在庫状況を常に把握でき、発注ミスや欠品、過剰在庫といったリスクを大幅に低減できるほか、棚卸作業も大幅に効率化されます。

ヒューマンエラーの削減と作業精度の向上

WMSはバーコードなどの自動認識技術と連携し、データ入力や在庫確認をスキャン操作で行うため、手作業による記入ミスや入力漏れといったヒューマンエラーを大幅に削減でき、作業の精度が向上するとともに管理の信頼性も高まります

作業効率の向上と生産性アップ

WMSは、ピッキングリストや出荷指示書を作成したり、商品の保管場所を最適化したりすることで、作業時間を短縮し効率的なオペレーションを実現します。また、作業者ごとの作業履歴や実績をデータ化できるため、パフォーマンスの分析や改善点の特定が容易になり、結果として生産性の向上にもつながります。

データ分析と需要予測による最適な在庫管理

WMSでは蓄積されたデータを分析し、商品の出荷傾向や需要予測を基にした発注管理が可能になります。これにより、在庫過不足の発生を防ぎつつ、発注点を適切に設定できるため、無駄なコストを削減しながら機会損失を回避する効率的な在庫管理が実現します。

トレーサビリティと品質管理の強化

WMSはロット番号や賞味期限の管理機能を備えており、商品の入出庫履歴を細かく記録することで、問題発生時には迅速に該当商品を特定することができます。また、食品や医薬品などの業界では規制への対応が求められるため、トレーサビリティと品質管理を強化できるWMSの導入は安全性の向上にも大きく貢献します。

拡張性とシステム連携による業務の最適化

WMSは、ERP(基幹業務システム)や販売管理システムと連携して在庫情報を一元管理できるため、複数拠点や海外倉庫など広範囲にわたる業務も統合管理が可能です。また、将来的な事業規模の拡大にも柔軟に対応でき、データ連携による業務の効率化と最適化を実現します。

WMSは、現代の物流環境に求められるリアルタイム性、正確性、効率性、データ分析、品質管理、拡張性といった要素をすべて備えており、手作業や棚カード(棚札)による在庫管理が抱える課題を根本から解決するシステムです。

棚カード(棚札)からWMSへの移行事例

棚カードを使用した在庫管理は、小規模な倉庫や限定された品目の管理には一定の効果を発揮します。しかし、取扱商品の増加や業務拡大に伴い、手作業による管理では限界が生じるケースが多く見られます。ここでは、実際に棚カード(棚札)からWMSへ移行した事例をいくつか紹介し、導入による改善点を簡潔にまとめます。

事例1:在庫数のズレと棚卸負担の解消

ある製造業の企業では、棚カードを用いた管理を行っていましたが、入出庫の記録漏れや更新遅れが原因で、実際の在庫数と帳簿の数字にズレが生じるケースが頻発していました。さらに、棚卸作業では複数日を要し、業務停止や人的コストの増加が課題となっていました。WMSを導入した結果、リアルタイムでの在庫更新が可能となり、在庫精度が大幅に向上したほか、棚卸作業の時間が短縮されました。

事例2:多品種・小ロット対応への強化

通販事業を展開する企業では、多品種・小ロットの取り扱いが増える中で棚カード管理に限界を感じていました。発注ミスや誤出荷が発生し、クレームの増加につながっていたため、WMSへの移行を決断しました。導入後はバーコード管理によるピッキングと発注点管理の最適化が実現し、誤出荷率が激減しました。加えて、作業効率が向上し、短時間でより多くの出荷作業をこなせるようになりました。

事例3:事業拡大に伴う拠点増設への対応

ある物流企業では、事業拡大に伴って拠点数が増えた結果、棚カードによる管理が煩雑になり、拠点間の在庫情報共有や管理精度の低下が問題となっていました。WMS導入により、複数拠点を一元管理できる仕組みを構築し、拠点間での情報共有と在庫の最適化が実現しました。これにより、欠品や過剰在庫を抑えつつ、業務効率が大幅に改善されました。

これらの事例からもわかるように、棚カードによる管理はシンプルで手軽な反面、拡張性や精度の面で課題が生じるケースが多く、成長する企業や複雑化する物流現場ではWMSへの移行が大きなメリットをもたらします。

まとめ

在庫管理は、企業の運営効率や顧客満足度を左右する重要な業務であり、従来の棚カード(棚札)を用いた管理手法は一定の役割を果たしてきました。しかし、近年の物流環境の変化により、即時性や正確性、多品種・小ロットへの対応力、作業効率、トレーサビリティ、データ分析、拡張性などが求められる中で、棚カード管理では限界が露呈しています。

WMS(倉庫管理システム)は、これらの課題を解決するシステムです。リアルタイムでの在庫情報更新、ヒューマンエラーの削減、作業効率向上、データ分析による需要予測、品質管理強化、システム連携による拡張性といった多くのメリットを提供します。実際に、棚カードからWMSに移行した企業では、作業時間の短縮や在庫精度の向上、品質管理能力の強化、コスト削減など、さまざまな成果が報告されています。

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在庫(STOCK)管理:ケース在庫とピース在庫の効率的な運用が可能。
データマッピング機能:自由度の高いマッピングであらゆるシステムと連携可能。

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今後は、在庫管理の高度化はますます進み、データ連携や自動化技術の発展によりさらなる効率化が求められる時代が訪れます。企業が競争力を高めるためには、従来の棚カード管理に固執せず、システム化を進めることが欠かせません。

最後に、WMSへの移行を検討されている企業様には、トミーズコーポレーションの「BEELOGI」を強くおすすめします。導入時のコンサルティングから運用後のサポートまで丁寧に対応し、業務改善と効率化を実現するための最適なプランをご提案いたします。ぜひお気軽にご相談ください。

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