アパレル物流・ファッション物流の重要性と今後
目次
アパレル業界を支える物流システム
アパレル業界を支える物流システムは、衣料品やファッションアイテムを生産者から消費者まで効率的に届けるための重要な仕組みとなっております。アパレル業界では、季節ごとの新作コレクションやトレンドの変動に迅速に対応する必要があります。そのため、アパレル物流には、高度な在庫管理や品質保持が求められます。さらに、オンライン販売の増加に伴い、消費者が注文した商品を迅速かつ確実に届けることが重要となっています。アパレル物流は、これらのニーズに応えるための多岐にわたる役割を担っています。例えば、アパレル商品の検品や仕分け、専用の配送システムの導入などがあります。
アパレル物流の昔と今
昔のアパレル物流は、主に実店舗への納品が中心でした。アパレルメーカーは、各店舗に商品を配送するために、工場から店舗への納品を行っていました。この過程では、アパレル商品の仕分けや検品、発送準備など多くの手作業が必要でした。また、アパレル商品の多様性から、各店舗の発注量に応じた細かな調整が求められました。例えば、アパレル商品のサイズやカラーごとの調整が必要でした。
現在のアパレル物流は、大きく変化しています。コロナ禍以降、外出自粛や在宅勤務の影響で実店舗への来店が減少する一方、EC利用が増加しました。ユニクロやしまむら、アダストリアなどの大手アパレル企業は自社ECサイトを強化し、売上を伸ばしています。ECサイトの台頭により、アパレル商品を直接消費者に届ける機会が増えました。これに伴い、効率的な返品処理やオムニチャネル戦略の実施が求められています。さらに、消費者のサステナビリティへの関心が高まる中、環境に配慮した戦略が重要視されています。
出典:アパレル業界 売上高ランキング(業界動向サーチ)
アパレル物流の進化により、AIや自動化技術が導入され、アパレル商品の在庫管理や発送プロセスの効率化が進んでいます。これにより、従来の手作業による仕分けや配送の時間が大幅に短縮されました。将来的には、さらに多くのプロセスがデジタル化され、より迅速で効率的なアパレル商品の配送が実現されることが期待されています。例えば、ロボティクスの導入や、商品のリアルタイム追跡などがあります。
アパレル物流とファッション物流の重要な役割を果たすシステム
アパレル物流・ファッション物流のシステムは、ただ商品を配送するだけでなく、季節性やトレンドの変動に速やかに対応し、SKUの多様性を管理し、品質を保持し、持続可能なサプライチェーンを維持する複雑な役割を担っています。これらの課題に対処するためには、新しい技術の導入や効率的な返品処理、厳格な品質管理、そしてオムニチャネル戦略の実施が必要です。特にオンライン販売の増加により、消費者がオンラインで購入した衣類を返品するケースが多く、返品処理の効率化が業界の大きな課題となっています。また、サプライチェーンの透明性とサステナビリティに対する消費者の関心が高まっており、環境にやさしい戦略を採用することが、ブランド価値を高める上でますます重要になっています。
現在のアパレル物流・ファッション物流には様々なシステムが関わっています。そしてその中でも特にシステムが重要な役割を担っています。というのも、特に大手になると、日本全国に展開しているからです。メーカーは、各店舗に商品をディスプレイするために、工場からそれぞれの店舗に商品を納品する必要があります。しかも店舗の大きさなどによって、発注量もそれぞれ異なります。そうなると荷物を運ぶ前に仕分けも必要となってきます。アパレル商品の場合、同じメーカーでもアイテムによってデザインが異なり、さらに同じシャツでも、カラーやサイズなど異なる商品をいくつか入れておく必要があります。サイズやカラーなども含めて、それぞれのお店にどのくらい納品すればいいか調整をしなければなりません。
もし納品した商品の中に不良品が混ざっていたり、品物の中に何か異物が混入していると後々問題になります。そこで検針作業という検品を行ったうえで出品をするのが一般的です。このように衣料品を配送するためにはいくつもの段階を経て、初めて運び込めるのです。
また百貨店など一部店舗では、売れ残った衣料品を返品する条件で契約を交わしているケースもあります。するとこの返品による配送も物流で担っていかなければなりません。さらにそれぞれのシーズンによって売れ筋の商品も違ってきますので、在庫管理における細かな配分も求められます。このように、業界におけるアパレル物流の役割は今までも大変大きなものでした。しかしこれからの時代、その存在感はますます大きくなると考えられています。
通販サイトの台頭で今後ますます重要に
ニュースを見てみると、運送会社の負担が大きくなっているという話をしばしば聞きます。その背景として、2024年問題におけるドライバー不足や通販サイトの普及が関係しています。実はこの問題はアパレル物流でも生じており、通販サイトは24時間いつでもパソコンやスマホで注文できる、自宅に商品を届けてもらえるということで、普段仕事をしていてなかなか店舗に行けない人の間で人気が高まっている反面、運送会社の荷物の取扱量が増え、ドライバーの不足と相まって運賃の値上げなどで対処せざるを得なくなっています。
アパレル業界を見てみると、通販に特化して実店舗を持たない形式の会社も増えてきています。これまでは先ほども紹介したように、メーカーの工場と店舗の間の商品の荷物のやり取りが主流でした。しかしこれからの時代、工場から顧客のところに商品を持っていくウエイトもどんどん増えていく可能性が高くなっています。通販サイトからのニーズが高まると、ビジネスモデルも変わっていく必要があります。通販サイトの傾向を見てみると、土日に増える傾向が見られます。週末は仕事が休みの人が多く、自宅でゆっくりパソコンを使って買い物をするというスタイルをとる方が多いためです。よって、数多くの注文に対応するためには、土日には在庫を特に多めに確保しておいたほうがいいと言えます。そして発送は週明けに増えることになります。
通販サイトが台頭してきたことで、新しいタイプのアパレル物流やファッション物流も出てきつつあります。通販サイトが登場したことで、シーズンや日ごとに在庫数や流通量が大きく変動することもあり得るでしょう。在庫の量や荷物の発送量に応じてコストが変動するタイプにするなどして、コスト圧縮を目指すスタイルをとっているところも出てきつつあります。
アパレル物流とAIの関係が将来に及ぼす影響
どの世界でもAIが世間を騒がせています。アパレル物流においてもAIが今後どんどん活躍できる可能性があります。通販サイトのマーケットが拡大することで、当日発送するようなスピーディーな対応は難しくなりつつあります。実際当日発送を行ってきた運送会社の中には当日発送からの撤退や時間指定の見直しを行い始めています。これが今後解決すべき問題の一つです。
そしてその解決策として注目を集めているのがAIです。従来の場合、倉庫で商品の仕分けを行ってそれをトラックに運び入れて配達するスタイルをとってきました。この場合仕分けは人の作業なのでそれなりに時間がかかります。人を増やせば作業能力はアップしますが、人件費がかさんでしまいます。しかしAIを導入することで、倉庫内のすべての在庫をデータ管理できます。すると在庫の管理や発送方法の中で最も高い効率が期待できる手法をAIが自動的に割り出してくれます。そうなれば多くのスタッフを雇う必要がなく、スムーズに発送することも可能になるわけです。
そのほかにも大きな課題は、お客さん不在の点です。せっかく商品を持って行っても肝心のお客さんがいないと再配達になってしまうというものです。しかしこれもGPSなどを使って自分の荷物がどこにあるのかリアルタイムでお客さんが把握できるようになれば、自宅に届く前に再配達を指定できます。このようにして今までの無駄な工程を極力排して、効率化を進めていくことが期待されています。