企業や消費者のニーズに合わせて日々進化する物流とは
物流の世界の奥深さ
専門的な業界に精通している人でなければ、物流と聞いたら真っ先に浮かぶのは大型トラックではないでしょうか。
そして、昼夜を問わず長距離輸送で物を届けているイメージが強いものです。しかし、そんなに単純な物の移動だけではなくその過程でさまざまな役割を担っているものなのです。
もともとは「フィジカル・ディストリビューション」という英語が直訳された「物的流通」が短縮された言葉で、売り手から買い手に物が移動する流れを表したものです。
ただ、その過程には、物を集めて倉庫などに一時的に蓄える「入庫・保管」、何をどこで集荷してどこへ届けるかというオーダー内容を整理・伝達する「情報処理システム」、届け先や荷物の状況から車両や船舶、航空機などに積み込む「荷役」、さらに、検品や検針、値付けや補修などを施す「加工」や「梱包」などのさまざまな業務があり、これら全てを通して物流と呼んでいるのです。
必要とされるシーンによってもさまざまな種類に分けられます。例をあげると、製品を作る工場においては、その前の段階として原材料や部品を集める調達が必要となります。
また、完成された製品を自社倉庫や流通センターなどに移動する生産物流、次の段階で小売店に卸したり、小売店を通さずに直接消費者に届けたりする販売物流などもあります。
さらに、その過程で出てくる容器などの資源ごみをリサイクル施設に運ぶ回収物流などという種類のものもあり多種多様です。
人間の体内でイメージすると、張り巡らされた血管を使って血液が循環するようにさまざまなルートを循環しながら人々の生活をしっかりと支えてくれる大切な役割を担っています。
ただ、物を運ぶという時代から、さまざまな技術革新を経て物流技術も大きく進化して現在に至っていますが、今後もニーズに沿った付加価値がいろいろな形で追加されていくことでしょう。
物流の重要性
ネットショッピングなどを利用して宅配便で配送される場合、代金引換払いを利用することがあるでしょう。
決済を行うのは、販売業者ではなく宅配業者、つまり、宅配便を配送するドライバーが、荷物の配達とともに決済代行業務も兼ねているのです。
これだけをみても物流は単に物を運ぶことで終わらないということがよくわかるはずです。今日では、これまでそれぞれの専門業者が流通の過程で行っていた、組立や切断などの生産加工も顧客のニーズに合わせて同一業者が一括して行うのです。
また、梱包や値付けなどの販売加工の段階もひとつの業者で担っていることも珍しくなくなってきました。納品とともにドライバーが機器の設置、配線などを行うこともあり、その業務は多岐にわたるものとなっています。
これを従前のように分業して行うとなると、物品輸送業者、機器設置業者、精算業者と少なくとも3つの業者が必要となり、販売元のコスト負担が大きくなるとともに、消費者にも手間がかかってしまいます。
これまで領域別に明確に区別されていた、生産、物流、販売が一本化された新しい業種として発展しつつあります。保管や在庫管理、システム構築に加えて企画提案などを含めた総合的な流通がもたらす影響はかなり大きいと言えるでしょう。
高速道路や新幹線の開通、陸だけでなく、海、空の輸送の高速化、大型化がどんなに進化してもそれだけに頼っていては競合の激しい業界で生き抜くことは難しいでしょう。
企業が臨むのは大幅なコスト、時間の削減であり、プラスアルファのサービスを提供しないと需要がなくなってしまいます。
ロジスティクスへの進化
世界経済が不安定で年金受給額なども不透明な現代であり、一部の消費は伸び悩んでいるとも言われています。各企業は収益をあげるために物を多く販売することと同時にいかに無駄なコストを削減するかということを迫られています。
たとえば、アーティストの楽曲がさまざまな形で音楽配信されるようになり、CD業界の売り上げは確実に落ちています。
同じ商品を手に入れる方法は非常に多様化しており、一時期ブームになったからといって大量生産するとすぐに売れ残ってしまい廃棄しなくてはならないという事態にもなり得ます。
必要なものを必要とされる時に必要な量だけを生産することが廃棄ロスをなくす最善の策となり、需要動向をリアルタイムに把握しながら需要量に見合った供給を行うことが必要とされています。
現代の市場では、物を運ぶだけでなく、多様化するマーケットニーズに応えるために、部門全体の業務を丸ごと委託できる企業が強く求められており、関連する全ての業務を効率化して提案や実行、管理などをする「ロジスティクス」へと進化しています。商品のピックアップだけでなく、倉庫での保管や発送の代行、システムの構築や通関業者の紹介などこれまでになかった幅広い業務を一貫して行えるサポート力が求められています。それまでひとつひとつの過程ごとに専門業者に依頼して作業を行っていた時間とともにコストも大幅に削減できるため、消費者への還元から安く品物を届けることも可能となります。生産から消費にいたるまでのリードタイムが短くなることによって需要変動による不良在庫数を大幅に減らすことも期待されています。