アパレルの余剰在庫をどのように捉えていくべきか
昨今、アパレルによる地球環境汚染が問題視され、サスティナビリティを意識したブランドが増加している傾向にあります。しかしながら、アパレルビジネスを展開している企業にとっては環境問題はもちろん、自社の経営管理についてもいろいろと課題が残っているのではないでしょうか。また、そこに追い打ちをかけているのが、新型コロナウイルスの影響。アパレル企業にとってビジネスを継続させることすら容易なことではありません。今回は余剰在庫が環境問題に与える影響とビジネスとしてアパレル産業に与える影響を考えていきたいと思います。
目次
アパレルが引き起こす環境汚染
2015年11月にザトゥルーコストという映画が「服に対して本当のコストを支払っているのは誰か?」というメッセージとともにアパレル業界に警笛を鳴らしました。内容はアパレルによる地球環境汚染だけではなく、バングラディシュの縫製工場の倒壊と、工場内の劣悪な労働環境にも触れています。これらを引き起こした原因がファストファッションではないか?と問題を提起するような内容にも受け取れます。
日本が抱える余剰在庫の現状
(株)小島ファッションマーケティングは近年のアパレルの余剰在庫について以下のように推測しています。
直近2019年には98%を占める輸入品とわずか2%にすぎない国内生産品を合わせて28億4600万点のアパレル商品が供給されたが、国民の総消費数量(外国人旅行者消費は含まず)はセール品も含めて13億7300万点と48.2%に留まった。
供給過多になる原因は様々
現在、日本のアパレル産業が供給過多に陥っているのにはいろいろな理由があると考えられています。
参入障壁が低い
まず一つとして考えらえるのが、参入障壁が低いことでしょう。海外で買い付けたものを国内で販売することは個人事業主レベルでもできることですし、これからアパレルに参入する中小企業でも国内アパレルメーカーや商社と口座を開設してしまえば容易に小売りができてしまいます。最近のネット通販企業をみても商社を間に入れずに、直貿(直接貿易)している企業は少なくはありません。
原価率を下げるための大ロット生産
経済産業省によるアパレル産業の報告書は以下のように報告されています。
世界のアパレル市場は、2025年までに年平均3.6%(実質ベース、名目ベースでは7.6%)で成長が予測される。一方国内では国内のアパレル市場規模は、バブル期の15兆円から10兆円程度に減少する一方、供給量は1990年の20億点から40億点程度(2006年~2012年)へと、ほぼ倍増しており、衣料品の購入単価および輸入単価は、1991年を基準に6割前後の水準に下落している。
(参考:繊維産業の課題と 経済産業省の取組)
近年ではセールを連発するアパレル企業も増え、価格競争がますます激化していることから、原価率を下げようと工場に交渉し、結果大ロット生産している事実は否めません。
選択肢の増加から消化率が低下
人口減の中、アパレルの供給量が年々増加しているというのは消費者にとっては選択肢が増えているということです。アパレル企業の中にはアウトレット専門のストアを出店し、アウトレット用に商品を作り販売するケースも珍しくありません。特にインターネットが普及し、ネット通販が成長している近年では消費者にとって選択肢は無数にあると言えるでしょう。
売上予算達成のための追加生産
企業としては毎年昨対+〇〇%という予算を組まないといけません。そのため、商品が売れると在庫が無くなり、売れ筋の商品だと在庫を追加するようになります。しかし、よほどその商品が他のブランドと差別化されているか、消費者がブランドのファンでない限りは消費者にとってはそのブランドで在庫が無くなっていることは問題ではありません。インターネットが普及した現代では同じような商品をすぐに見つけることができます。そのため、消費者が他の選択肢を選んでしまうのは致し方がないことで、追加生産までの期間がどんなに短くても待ってもらえる可能性は限りなくゼロに近いと言えます。
グローバルSPAの台頭
世界のアパレル企業の中でも上位に君臨しているのが、グローバルSPA企業。超高速で世界中のトレンド情報処理を行って商品生産し「売り切り御免型」で一期一会の商品供給をしています。日本の企業がS/SとA/Wという風に一年を4回程度に分けて販売しているのに対し、グローバルSPA企業は1年を8~12回程度に分け、常時市場に合わせた商品が提供できるように在庫を回転させています。これは日本の企業にとっは脅威であることに間違いはありません。
余剰在庫を戦略的に活用している企業
できるだけベーシックな商品を作って販売し、複数年でも損金処理をせずに見せ方を変えて販売している企業は長期的に余剰在庫をコントロールしています。「新しい商品を作って販売しないと鮮度が落ちる」という考え方もありますが、マークダウン販売を繰り返すと利益率は低下しますし、新しい商品をどんどん作ってしまうと余剰在庫を増やすリスクが高まります。これらは負のスパイラルに陥る企業の特徴でもあります。
アパレルは店舗の外観や内観、またスタッフの接客やコーディネート等いろいろな要素があって消費者に認識されます。そのため、工夫次第では同じ商品でも毎年、新しい商品のように提案することも可能です。そうすれば3~5年の間、高いプロパー消化率を担保していけると言えるでしょう。
まとめ
余剰在庫を長期的にコントロールしていくことは一つの選択肢ですが、全てのブランドや全ての商品に向いているかと言うとそうではありません。そのため、自社の目指すブランドを再定義し、経営戦略に合わせた在庫管理をしていくことが重要です。時には二次流通させるために業者に買取依頼することも検討しないといけません。しかし、忘れてはいけないのはその二次流通はもちろん、メルカリ等のCtoCが活性化している時代には中古市場も自社の競合製品になる可能性があるということです。
トミーズコーポレーションでは企業の余剰在庫の保管になるべくコストがかからないように保管効率を上げるご提案をしています。中小のアパレル企業の皆様には物流を経営戦略の一環として捉えて頂くことを提唱いたします。
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