ECフルフィルメント委託のメリットとデメリットについて
EC市場の拡大は経済産業省が報告する「電子商取引に関する市場調査の結果を取りまとめました」にも記載されている通り、その勢いが衰えることはなく、依然として成長を続ける重要な市場です。特に近年では、コロナ禍をきっかけとした消費者行動の変化が、オンラインショッピングの普及をさらに加速させ、EC市場の規模を押し上げています。この背景には、個人消費のデジタル化や、サプライチェーン全体の効率化を求める流れがあります。
こうした中で、ECフルフィルメントは、単なる物流業務を超え、事業の成長に直結する重要な要素として注目されています。ECフルフィルメントの効率化や品質向上は、顧客満足度を高め、リピート購入や新規顧客獲得に繋がるため、事業者にとって欠かせないテーマとなっています。
本記事では、EC事業を成功させるための重要な要素である「ECフルフィルメント」に焦点を当て、そのメリットとデメリットについて詳しく解説していきます。特に国内電子商取引市場規模の急拡大を踏まえ、効率的なフルフィルメント運営がいかに競争力を高めるかについても考察します。
(引用:経済産業省「電子商取引に関する市場調査の結果を取りまとめました」)
目次
ECフルフィルメントとは
ECフルフィルメントとは、ネットショップ運営に伴うバックヤード部分を指します。具体的には、受注処理、決済処理、在庫管理、発送業務、顧客対応といった、商品が注文されてから顧客に届くまでの一連の業務全般が含まれます。このバックヤード業務の効率化は、EC事業者にとって競争力を維持・向上させるために欠かせないものです。
近年、ECフルフィルメントの重要性はますます高まっています。顧客の期待値が上がり、配送スピードや正確さ、さらには個別対応などが求められる中で、効率的かつ質の高いフルフィルメントが、事業の成否を左右する要因となっています。それでは、各業務について詳しく見ていきましょう。
受注処理
お客様から注文が入ったらまず行う業務が受注処理です。注文内容によって、スムーズに発送できるものもあれば、お客様に確認が必要なものもあります。最近では受注処理に人の手を介さない、いわゆる自動化を進めているショップもあります。人件費が削減でき、発送までのリードタイムを短くできるため、顧客にもメリットがあります。ただ、名入れやオーダーメイド商品を取り扱うショップなどはお客様と意思疎通をしっかりと取らないとクレームにつながる可能性があるので注意が必要です。
決済処理
近年のネットショップでは多彩な決済方法が用意されています。それは注文時、ユーザーが求める決済方法がないとユーザーは離脱するというデータがしっかりと公表されているからです。ショップとしてはできる限り、カゴ落ちユーザーを減らしたいのが本音でしょう。決済方法によっては受注後に決済処理が必要なものがあります。例えばクレジットカードの場合はオーソリ処理といって、クレジットカードが期限内か利用枠があるかなどの承認作業が必要になります。その他、銀行振込の場合は口座への入金確認が必要となります。このように決済毎にそれぞれ独自の決済処理が発生します。
在庫管理
お客様に正しい商品をいち早く届けるためには在庫管理が大切です。どこに、何が、どのくらいあるのか分からないとスピーディーに商品を発送することができません。WMSという倉庫管理システムを導入していれば、入荷時に入荷検品を行うことで、正しい在庫数を把握できます。次に、在庫を保管する際にはロケーション管理といって、棚やパレットに住所のようなものを付与することが必要になります。ロケーション管理がしっかりとできていると、どこに何がどのくらいあるのかすぐに分かります。また、在庫数も正確に管理できます。
もし、間違った在庫数を販売システムに反映してしまっていたらどんな問題が起こるでしょうか。あったはずの商品がないとなると、注文したお客様からクレームが発生してしまいます。高評価のショップレビューを獲得していかないといけない昨今では、ミスを一つでも減らしていく取り組みが重要となります。
発送業務
さきほどの話にもつながりますが、ロケーション管理がしっかりとできていると、ピッキング業務をスピーディーに行うことができます。また、発送業務の中には流通加工も含まれます。割れやすい商品などは梱包時にエアークッションなどの緩衝材を入れる対応が必要になります。また、ギフト対応やチラシ・ノベルティの封入作業もショップによっては必要になってくるでしょう。
最後に、気を付けなければいけないのは、注文明細書の入れ間違いや送り状の貼り間違いを防ぐことです。個人情報の取り扱いがシビアになっている近年では誤発送はもってのほかです。
顧客対応
コールセンター業務とも言われます。お客様からの問い合わせは多種多様です。商品の問い合わせもあれば、ショップの営業時間の問い合わせもあります。1番厄介なのがクレーム対応です。せっかくスムーズに商品を発送することができたとしても、クレームが発生してしまってはここに1番労力がかかってしまいます。クレームだけならまだしも、低評価のレビューがついてしまったら、今後の売上減衰に繋がります。顧客満足度を高めていくためにもしっかりとしたケアができる体制づくりが望まれます。
ECフルフィルメントを委託するメリット
ネットショップのバックヤード業務をプロフェッショナルに委託することで、運営の負担が大幅に軽減されます。特に中小規模のショップや、運営開始直後の事業者にとっては、限られたリソースを有効活用するためにECフルフィルメントの委託は非常に有効な選択肢です。
業務効率の向上
バックヤード業務には受注処理、決済処理、在庫管理、発送業務、顧客対応など、多岐にわたる業務が含まれます。これらの業務は専門知識と経験が求められるだけでなく、特に繁忙期には人的リソースの限界を超えることも少なくありません。ECフルフィルメントを専門とする企業に委託することで、これらの業務が効率的かつ高品質に処理されます。例えば、最新の倉庫管理システム(WMS)やピッキングロボットを導入している業者では、人的ミスを減らし、スピード感のある発送を実現しています。
コア業務への集中
ECショップ運営において、最も重要な業務は商品企画や販売戦略の立案、マーケティング活動です。しかし、バックヤード業務に時間や労力を取られてしまうと、これらのコア業務に十分なリソースを割けなくなることがあります。ECフルフィルメントを委託することで、経営者や運営チームは商品ラインナップの強化や広告キャンペーンの企画、顧客データの分析といった重要なタスクに専念できます。これにより、売上拡大やブランド価値向上のための取り組みがスムーズに進みます。
スケーラビリティの確保
ECショップの成長に伴い、受注量や出荷数が急増することがあります。これに対応するためには、人的リソースや設備の増強が必要ですが、急激な需要増に自社で対応するのは難しい場合があります。ECフルフィルメントを委託することで、こうした負荷を吸収し、季節変動やプロモーション時の急な注文増にも柔軟に対応可能です。また、委託業者は複数の事業者の業務を取り扱っているため、大量の受注処理にも慣れており、高い処理能力を持っています。
コスト削減
自社でフルフィルメント業務を内製化する場合、人件費や倉庫管理費、設備投資などのコストが発生します。一方、委託を活用することで、これらの固定費を変動費化でき、必要な分だけのコストを支払う形で運営が可能です。また、専門業者は業務効率が高いため、自社で処理する場合と比較してコストパフォーマンスが向上する場合もあります。
顧客満足度の向上
フルフィルメントを専門業者に委託することで、業務の精度が上がり、誤出荷や配送遅延といった問題が減少します。これにより、顧客満足度が向上し、高評価のレビューを獲得しやすくなります。顧客満足度はリピーターの増加や口コミによる新規顧客の獲得に直結するため、ECショップ運営の成功に欠かせない要素です。
最新の技術やノウハウの活用
フルフィルメントを専門とする業者は、最新の物流技術や運用ノウハウを取り入れている場合が多く、自社運営では得られない品質の高いサービスを提供してくれます。例えば、リアルタイム在庫管理やAIを活用した需要予測機能など、業務効率化やコスト削減に直結するシステムを活用することが可能です。
このように、ECフルフィルメントを委託することで、効率性や柔軟性、専門性を活かした運営が可能となり、長期的な事業成長を支える重要なパートナーとなります。
ECフルフィルメントを委託するデメリット
ECフルフィルメントの委託は業務効率の向上やコスト削減など多くのメリットを提供しますが、一方でデメリットも存在します。特に顧客対応に関しては、委託する際の課題が浮き彫りになることが多いです。ここでは、具体例を挙げながらそのデメリットについて掘り下げていきます。
商品の問い合わせ
顧客から商品の問い合わせがあった場合、正確かつ迅速な対応が求められます。特に、商品の仕様、使い方、適用事例などについて詳しい知識を持って回答することが、購入促進につながる重要な要素です。しかし、商品数が多く、特に専門性が高い商品を扱う場合には、委託業者が顧客を満足させる対応を行うのは容易ではありません。
たとえば、ECショップが扱う商品の多くがカスタマイズ可能な場合、細かな仕様を正確に把握していないと、顧客を混乱させる回答をしてしまうリスクがあります。このような対応ミスは、信頼を失う原因となり、購入意欲を低下させるだけでなく、場合によっては悪評につながることもあります。
委託業者では、簡易的なマニュアルをもとに対応することが一般的ですが、対応スキルには限界があります。最近ではAIを活用したチャットボットやFAQの整備が進んでおり、よくある問い合わせを自動対応することで負担軽減が図られています。しかし、これだけではカバーできないケースも多く、特に新商品や特殊な商品の問い合わせには対応が難しい場面が発生します。
また、顧客からの問い合わせ内容は、商品改良や新規商品の企画において重要な情報源となります。これを外部に任せると、顧客の声を十分に吸い上げられない可能性があり、自社の成長機会を逃してしまうリスクもあります。
クレーム対応
クレーム対応は、ECフルフィルメントにおける委託の中で最もデリケートな課題の一つです。クレーム対応が適切に行われない場合、二次クレームに発展し、顧客の信頼を完全に失うこともあります。たとえば、代行業者が事務的な対応に終始し、顧客の不満や感情を十分にくみ取れなかった場合、状況が悪化することがあります。
クレーム対応では、迅速かつ柔軟な対応が求められますが、委託業者では自社スタッフほどスピーディーに意思決定を行うことが難しい場合があります。自社スタッフであれば、迅速に上司や責任者にエスカレーションし、解決策を提示できますが、委託業者の場合、プロセスが複雑化し、対応の遅延が生じることがあります。
また、対応の「熱意」や「共感」も重要です。自社スタッフは自社ブランドへの愛着や責任感から誠心誠意対応しますが、委託業者のスタッフはブランドに対する意識が薄い場合があり、顧客への熱意や共感が欠ける可能性があります。このような状況では、問題解決に向けた真摯な対応が期待できない場合があります。
最近では、ECモールでショップレビューへの返信機能が強化されており、低評価のレビューに対して誠意ある対応を見せることで評価を上げるチャンスが広がっています。この機能を活用するためには、自社スタッフが直接顧客対応を行う方が効果的です。特にクレームを「ピンチ」から「チャンス」に変える対応力は、長期的な顧客関係を築く上で重要です。
在庫管理と発送業務のみの委託がおすすめ
ECフルフィルメントを成功させるためには、すべての業務を外部に委託するのではなく、自社で対応すべき部分と委託できる部分を適切に分けることが重要です。特に、在庫管理と発送業務は、業務の効率化やコスト削減に直結するため、外部の専門業者に委託することが最適な選択となる場合が多いです。
在庫管理を専門業者に委託することで、倉庫管理システム(WMS)や最先端のロケーション管理技術を活用し、正確かつ効率的な在庫管理が可能になります。これにより、在庫不足や過剰在庫のリスクを軽減し、顧客に適時に商品を届ける体制を整えることができます。また、繁忙期やセール時の在庫の流動性を確保するための柔軟な対応も、委託業者の強みの一つです。
発送業務の委託により、物流の専門知識や設備を活用することで、迅速かつ正確な配送が実現します。梱包の標準化や流通加工(例えば、ギフト包装やプロモーション用の同梱物の封入)も委託業者の手により高品質に行われ、顧客満足度を向上させる効果が期待できます。特に近年、配送スピードや正確性がECショップの競争力を左右する要因となっているため、プロに任せる価値はますます高まっています。
一方、顧客対応やクレーム処理といった業務は、自社で対応することが理想的です。これらの業務は顧客との直接的な接点であり、ブランドイメージの構築やファンの獲得に欠かせない部分だからです。特に、問い合わせやクレーム対応を通じて得られる顧客の声は、商品企画やサービス向上の貴重な材料となります。
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(参考)コールセンターは「会社の顔」! 内製化で「試着代行サービス」を実現する女性通販ドゥクラッセ
このように、在庫管理と発送業務の委託を活用しつつ、顧客との直接的な接点となる部分は自社で運営することで、効率的かつ効果的なECフルフィルメントを実現できます。長期的な視点を持ち、ブランドのファンを増やす戦略を進めることが、持続可能な成長につながるでしょう。
まとめ
EC市場の急速な成長に伴い、効率的で高品質なECフルフィルメントの運営は、事業成功のカギとなっています。特に、在庫管理と発送業務は、顧客満足度の向上や運営効率化に直結する重要な業務です。これらを専門業者に委託することで、ショップ運営者は商品企画やマーケティングなどのコア業務に集中でき、競争力を高めることが可能となります。
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